京浜急行電鉄(京急)は2022年11月26日(土)にダイヤ改正を実施し、日中時間帯における「特急」運転の復活、「エアポート急行」の減便など、運転パターンを大規模に見直します。
日中の快特の半数を特急化
「アフターコロナの沿線を、より便利に、より快適に」という目標で実施される今回のダイヤ改正は、コロナ禍におけるワークスタイルの変容などによる、鉄道の利用シーンの大きな変化に対応したものになります。
1999年7月のダイヤ改正以降、都心と三浦半島を結ぶ本線の日中時間帯は、停車駅の少ない10分間隔の「快特」を中心とした運転が続けられてきました。今回、都営浅草線に直通する1時間あたり3本の快特が特急に置き換えられ、快特・特急を10分間隔で交互に運転するパターンが23年ぶりに復活します。併せて、空港線と品川駅・都営線方面を直通する快特の一部が特急に変更され、空港線内各駅から乗り換えずに都心方面へ向かえるようになります。本線の青物横丁駅と平和島駅では、特急停車により乗車機会が1時間あたり6本から12本へと倍増するなど、特に都内の区間において利便性が向上します。
快特・特急の2本立てとなることに伴い、途中の待ち合わせ駅での普通列車との接続も改善されます。例えば、普通列車のみ停車する梅屋敷駅から品川駅に向かう場合、現行ダイヤでは途中駅で快特の通過待ち合わせを2回行うため、約17分かかります。改正後は平和島駅で接続する特急に乗り換えができるため、最速の場合は約11分で到達でき、6分の時短効果が生まれます。
一方で、羽田空港〜逗子・葉山駅間で運転している横浜方面のエアポート急行は運転本数が半減し、運転頻度は20分間隔に変更されます。京急によると、接続の改善により途中駅への利便性の維持を図るとのことです。また、空港線〜都心方面の「エアポート快特」は従来通り40分間隔で運転され、羽田空港への速達サービスは継続されます(ダイヤ改正の概要、日中の運転パターンの新旧比較など詳細は下の図表を参照)。
品川8時台着の「モーニング・ウィング号」
アフターコロナにおいて快適な乗車サービスを提供するため、各種「ウィングサービス」も改善されます。平日朝の座席指定列車「モーニング・ウィング5号」は現在、品川駅の到着時刻はラッシュピーク後の9:20ですが、運転時間帯が約30分繰り上げられ品川駅8:53着となり、オフィスへの通勤に利用しやすくなります。また、平日夕方に運転している「イブニング・ウィング号」全8列車を1か月間、制限なく利用できる「Wing Pass (イブニング・ウィング号)」が2023年1月から期間限定で発売されます。土休日の日中時間帯に設定されている座席指定車両「ウィング・シート」では、上り列車の乗車可能駅の制限がなくなり、三崎口駅〜金沢文庫駅間のすべての快特停車駅から利用できるようになります。
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そのほか、コロナ禍による利用者数の減少や、電気料金の高騰に伴う動力費の増加などの要因を受け、需要に合わせてダイヤの適正化が図られます。平日ダイヤでは、朝通勤時間帯に設定されている上り特急羽田空港行の一部が運転取り止めとなるほか、一部列車の12両編成への増結も中止となります。土休日ダイヤでは、三浦半島への観光需要に応えるため、日中は京急久里浜駅〜三崎口駅間での10分間隔運転が維持されますが、利用の少ない19時以降の同区間は20分間隔に減便されます。また、平日・土休日とも、空港線から品川駅方面への最終列車の一部が繰り上げられます。そのほかにも、一部列車で運転取り止めや列車種別・時刻の変更が発生します。
今回のダイヤ改正に合わせ、京浜急行バス(本社:横浜市)も同日に一部ダイヤを変更し、駅からの接続時間を改善することで利便性向上を図ります。
京急は、沿線住民のメリットを強化する抜本的なダイヤ改正と位置付けており、鉄道やバスなどの移動基盤と地域の拠点整備を連携する、新しい京急沿線のまちづくりを目指すきっかけにしたいと考えています。具体的には、従来の「都心一極集中型の移動や拠点開発」を改め、郊外の生活圏におけるワークスペース整備、沿線での住み替え提案、MaaS基盤の活用など、新しい時代の「多極化まちづくり」にシフトしていく方針を打ち出しています。